旧街道の宿場町に佇む三角屋根の終着駅!御嵩(みたけ)駅 (名鉄広見線)【訪ねて行きたい鉄道駅舎 第27回】

文・写真/杉﨑行恭(フォトライター)

名古屋鉄道(名鉄)の犬山駅から分岐する、名鉄広見線に乗った。走るのは4両編成の3150系、ダークグレーのステンレス車だ。名鉄と言えば「名鉄スカーレット」という赤い電車が名物だった。この3150系は新しくて快適だけど、赤くない名鉄電車は、ガンメタのフェラーリみたいで印象も薄い。

名鉄広見線は、中間の新可児駅でがらりと雰囲気が変わる。ここまではセントレア(中部国際空港)直結の特急が走る華やかな路線だが、新可児駅から先はワンマン運転でしかも単線だ。電車も乗り換えることになる。待っていた電車は真っ赤な6000系だった。

スイッチバック駅の新可児駅から出た電車は、ローカルムードの郊外路線を走る。車窓風景も田園地帯に変わる。赤い電車にゆられて約10分、居眠りしていたら終点の御嵩駅だった。あわてて降りたホームの末端に三角屋根の駅舎があった。

今では無人化され、改札口もフリー状態だが、駅舎内には御嵩町の観光案内所があった。そこで聞くと「駅の正面が中山道で、ちかくに本陣跡もあります」と教えてくれた。御嵩駅は宿場町の旧街道に乗り入れるような位置に置かれていたのだ。

木造平屋の駅舎は1952年(昭和27)建築、ここまで広見線が延伸したときに建てられたものだ。

駅前に立って駅舎を観察する。切妻の大屋根に小屋根をクロスさせ、旧街道に向いた三角にハーフティンバーの柱模様を浮き立たせている。このままカフェやレストランにしたくなるようなカタマリ感のある洋館駅舎が可愛らしく、小江戸風の宿場によく似合っていた。

もとより鉄道駅舎は開口部が多く風通しもいい。「ホームの長椅子にはお年寄りが夕涼みに来られます」という。

中山道の御嵩宿は、これより恵那に続く十三峠をひかえた宿場町で、江戸時代には28軒の旅籠があったという。そんな歴史を展示する『中山道みたけ館』が駅前通り(中山道のこと)にある。

この名鉄広見線は、前身の東濃鉄道によって1920年(大正9)に隣駅の御嵩口駅(開業時は御嵩駅だった)まで建設された。かつての広見線は、この御嵩口駅から近郊で採掘される亜炭を積み出す炭鉱鉄道の側面もあった。しかし昭和30年代に入ると、品質の劣る亜炭は淘汰され、御嵩町の炭鉱産業は終焉を迎える。

亜炭の採掘が最盛期だった昭和27年、宿場町の中心部まで線路を伸ばして開業したのがこの御嵩駅だった。いい駅舎あるところには地場産業あり。そんなことを感じながら古い家並みの御嵩宿を歩くと、いつまでも駅舎の三角屋根が街道の先に見えていた。

【御嵩(みたけ)駅 (名鉄広見線)】
■ホーム:1面1線
■所在地: 岐阜県可児郡御嵩町
■駅開業:1952年(昭和27年)7月1日
■アクセス:名鉄名古屋駅から犬山、新可児経由で約1時間10分

文・写真/杉﨑行恭
乗り物ジャンルのフォトライターとして時刻表や旅行雑誌を中心に活動。『百駅停車』(新潮社)『絶滅危惧駅舎』(二見書房)『異形のステーション』(交通新聞社)など駅関連の著作多数。