熱海の温泉街にたたずむ南国洋館風モダン駅舎!来宮駅(JR伊東線)【訪ねて行きたい鉄道駅舎 第23回】

来宮駅 (1)_s

文・写真/杉﨑行恭(フォトライター)

熱海駅から伊東線の電車に乗った。電車は東海道線でおなじみのE231系10両編成だが、海岸沿いを走る伊東線だと思うと気分もなんとなくユルむ。

熱海駅はJR東日本の駅だが、構内の西からはJR東海のエリアとなる。そんな熱海駅から分岐するJR伊東線は、全線が静岡県内を走るが、こちらはJR東日本の路線。静岡県の東のはずれにある熱海市だけに、ここが神奈川県だと思っている人も多いのではないだろうか。

ともあれ電車は東海道線と並行して熱海市内を進み、小さなトンネルを抜けるともう来宮(きのみや)駅だ。

来宮駅 (6)_s

傾斜地が多い熱海市街だが、来宮駅も鉄道用地以外は山の斜面にある。オレンジ色のスパニッシュ瓦の屋根に白壁の駅舎は、木造平屋の洋館づくり。玄関には小屋根付きのポーチがあり、その上のハーフティンバーの飾りがモダンな印象だ。

無人化された待合室

来宮駅玄関ポーチ (2)_s

来宮駅 (4)_s

建てられたのは1936年(昭和11)で、伊東線部分開業から2年後のこと。見てのとおりの南国洋館風駅舎だが、同時期に開業した伊豆多賀駅や網代駅なども同じデザインポリシーの駅舎となった。当時は伊豆のリゾートに直結する路線として、いっせいにこのような洋館駅舎が建てられたようだ。

ちょうど1934年(昭和9)に開通した丹那トンネルの東側出入り口にあたり、掘り出された土砂で来宮駅や鉄道用地が造成されたのだという。ちなみに丹那トンネルは全長7,804mで、16年をかけて建設され、その間には大量出水や大地震(関東大震災、北伊豆地震)が発生するという鉄道史に残る難工事だった。そのくだりは吉村昭の小説『闇を裂く道』に詳しい。

そんな丹那トンネルは東海道本線と東海道新幹線が並んでいて、来宮駅のホームからも開口部を見ることができる。

丹那トンネル上の「殉職碑」

丹那トンネル上の「殉職碑」

丹那トンネル上から来宮駅(右)

丹那トンネル上から来宮駅(右)

新幹線の新丹那トンネル

新幹線の新丹那トンネル

さて、来宮駅周辺には丹那トンネルのほかにも毎年2月になると大勢の人が訪れる熱海梅園や、駅名の由来になった来宮神社(巨大クスノキが有名)がある。1日の乗車客も千人を超える市街地の駅だが、2015年の春から無人化されてしまった。

今では特急も止まらない中間駅だが、JRの新特急「伊豆クレイル」をはじめ、伊豆急から乗り入れる「リゾート21」などが頻繁に通過する。人通りの多い温泉街にあるだけにここが無人駅には見えない。

来宮駅_s

来宮駅は標高71m、熱海温泉の源泉とされる大湯まではだらだらと下って5分ほど、レトロな熱海銀座商店街はその下側にある。電車で訪れる熱海散策なら、じつは熱海駅よりこの来宮駅のほうが便利だ。

【来宮駅(JR東日本 伊東線)】
■ホーム:1面2線
■所在地:静岡県熱海市福道町
■駅開業(駅舎も含む):1935年(昭和10)3月30日
■アクセス:JR東海道線熱海駅から伊東線で約5分。

文・写真/杉﨑行恭
乗り物ジャンルのフォトライターとして時刻表や旅行雑誌を中心に活動。『百駅停車』(新潮社)『絶滅危惧駅舎』(二見書房)『異形のステーション』(交通新聞社)など駅関連の著作多数。