本来の自分を取り戻せる島!沖縄の伝統工芸に新風を吹き込む3人の作り手を訪ねた【PR】

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取材・文/鳥居美砂

琉球王朝時代からの伝統文化が、今も大切に受け継がれている沖縄。陶芸や織物、染色、漆器といった工芸品をはじめ、伝統芸能や食文化に至るまで、日本のほかの地域とは異なった独特の文化が息づいています。

工芸品については、国の「伝統的工芸品」として認定されているものが14件ありますが、じつはこれは京都(17件)、新潟・東京(同16件)に次ぐ多さなのです。

近年は、内外から作家さんが沖縄に移住して工房を構えるケースや、逆に沖縄県出身者がほかの土地で修業を積んで戻って来るというケースもあり、沖縄の伝統工芸の世界に新しい風をもたらしています。他所では見つからなかった本来の自分を見つけたり、あるいは本来の自分の居場所に気づいたりする。沖縄とはそんな“本来の自分を取り戻せる場所”なのかもしれません。

今回は、そんな沖縄の伝統工芸のうち「やちむん」「紅型」「漆器」の3つについて、作り手を工房に訪ねました。

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【やちむん】松田共司さん(読谷山焼北窯)

読谷村の「やちむんの里」の象徴、読谷山焼の登窯。

読谷村の「やちむんの里」の象徴、読谷山焼の登窯。

17世紀末、当時の琉球王府は、沖縄各地に散らばっていた陶工たちを首里城下の「壺屋」という地区に集めました。以来、壺屋は陶器の一大産地となりました。

しかし時代が下り、戦後の復興期になると、住宅が密集してきたため、登窯の煙が問題となってガス窯に切り替えられていきました。そこで、壺屋を出てほかの地域に登窯を築く陶工が出てきました。

沖縄本島中部の読谷に工房を移したのは、のちに人間国宝となる金城次郎さんです。1980年には大嶺實清(じっせい)・金城明光・玉元輝政・山田真萬(しんまん)さんの4名が、読谷に共同で登窯を作り、「読谷山焼」を興しました。この共同登窯を中心に、ここ読谷に「やちむんの里」が形作られてきたのです。

そして、1992年には松田共司(きょうし)・松田米司(よねし)・宮城正亨(まさたか)・與那原(よなはら)正守さんの4名が独立して「やちむんの里」に「読谷山焼 北窯」を開きました。13連房の登窯で、年に5回、共同で窯焚きが行われています。その中のひとり、松田共司さんを訪ねました。

読谷山焼 北窯。

読谷山焼 北窯。

「読谷山焼 北窯」の松田共司さん。

「読谷山焼 北窯」の松田共司さん。

「北窯では沖縄の土を使って、登窯で焼くことを鉄則にしています。土は主に、本島北部で採ったものを数年寝かせてから使います。6種類ほどの土を器によって使い分けたり、混ぜ合わせたりしています。

面白いのは、恩納村の前兼久(まえがにく)という地区の土。この土だけではものは作れないけど、混ぜると耐火性が上がるんです。沖縄の土は扱いにくいし、歪みますが、なんともいえない味があります。

沖縄の焼物“やちむん”を突き詰めていくことのほかに、弟子の育成にも力を入れています。やちむんの未来を担う人材を育てることも、大切な役割りだと考えているからです」(松田さん)

松田さんたちの工房(北窯)では、現在6名の若き陶工が働いています。日本各地からこの北窯に修業に来て、年期が開けて地元に帰って自分の工房を持つ人も現れました。今では沖縄はもちろん、北海道、群馬、新潟、大阪、山口、鹿児島など日本全国で、弟子たちが作陶に励んでいるといいます。

小山のように見えるが、各地の土を寝かせている。水で土の不純物を取り、天日で乾燥させてようやく、陶器づくりに使える土になる。やちむんはこの土づくりから始まる。

小山のように見えるが、各地の土を寝かせている。水で土の不純物を取り、天日で乾燥させてようやく、陶器づくりに使える土になる。やちむんはこの土づくりから始まる。

成形した器を運ぶ若き陶工。

成形した器を運ぶ若き陶工。

ろくろを回すごとに、形ができていく。

ろくろを回すごとに、形ができていく。

北窯売店に展示されている松田共司さんのやちむん。

北窯売店に展示されている松田共司さんのやちむん。

松田さんたちの北窯のやちむんは、「北窯売店」で展示・販売されています。4名それぞれに違った個性があって、見ているだけでも面白いはずです。きっとお気に入りのものが見つかることでしょう。

【北窯売店】
住所/沖縄県読谷村字座喜味2653—1
電話/098-958-6488
営業時間/9時30分〜17時30分
不定休

【やちむんの里ホームページ】
http://www.yomitan-kankou.jp/detail.jsp?id=74732&menuid=11949&funcid=3

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【紅型】田中紀子さん(紅型工房 染虫)

高校時代に沖縄の工芸、とくに紅型に魅せられて沖縄にやって来た人がいます。田中紀子さんは兵庫県出身、沖縄県立芸術大学で紅型の基礎を学び、そのまま沖縄に根を下ろしました。

『紅型工房 染虫』を主宰する田中紀子さん。

『紅型工房 染虫』を主宰する田中紀子さん。

「紅型はあでやかな色彩で、生命力に溢れています。この表現は沖縄の太陽の光がなければ、できないものです。沖縄の日差しの下でこそ、輝くのです」(田中さん)

田中さんは古典紅型について学んだあと、その技法を取り入れながらも現代の暮らしに合うような紅型を目指しているとのこと。2005年には自宅に『紅型工房 染虫』を作り、作品づくりに励んでいます。

「紅型の着物は本当に美しいのですが、その着尺は高価で誰もが買えるわけではありません。また、古典的な柄の額だと和室には合いますが、畳の部屋がない現代のマンションの空間には向きません。ですから、今の視点を取り入れた作品づくりをしています」(田中さん)

古典柄とは違う、新たな紅型に挑戦している。

古典柄とは違う、新たな紅型に挑戦している。

田中さんは、若い人にも紅型を手にとってほしいからと、ポーチや名刺入れといった小物づくりにも力を入れています。これらの作品は『tituti OKINAWAN CRAFT(ティトゥティ オキナワン クラフト)』で扱っています。

普段の生活で使える紅型小物。

普段の生活で使える紅型小物。

その作業の様子をみせてもらったので、簡単にご説明しましょう。

紅型には大きく分けて、型紙を使って糊で模様を布にうつす「型染め」と、糊を袋に入れ絞り出して模様を手描きする「筒描き」があります。田中さんの技法は前者です。

まず、植物などのスケッチをしてデザインをおこし、そのデザインを写した紙を彫って型紙を作ります。次に、布の上に型紙をのせて、もち粉と糠を混ぜて作った糊を塗るのです。こうすると、配色したい部分だけが白く残ります。

そこに顔料で色を差していきます。色差しは2回に分けて行ない、最後に「隈取(くまどり)」を施します。歌舞伎の隈取と同じく、強調したい部分に色を差してメリハリをつけるのです。

型抜きした布に配色を施す。

型置きした布に配色を施す。

顔料は大豆の絞り汁、呉汁で溶いて使う。

顔料は大豆の絞り汁、豆汁で溶いて染める。

「沖縄の光にくっきりと浮かび上がる影を型紙のシルエットで表して、その光を浴びて輝く色彩を布に映すのです」(田中さん)

田中さんの作品は、沖縄に居るからこそ生まれるのです。

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【tituti OKINAWAN CRAFT(ティトゥティ オキナワン クラフト)】
住所/沖縄県那覇市牧志2−23−6
電話/098-862-8184
営業時間/9時30分〜17時30分
定休日/木曜
http://www.tituti.net

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【漆工芸】渡慶次弘幸さん・愛さん(木漆工とけし)

琉球に中国から漆工芸が伝えられたのは、15世紀頃といわれます。16世紀には優れた漆器を生み出すまでになり、高価な交易品として海外に輸出していました。

琉球王国の首里王府の中には、漆器を製作する「貝摺(かいずり)奉行所」と呼ばれる部署もありました。「貝摺」の名前は、夜光貝を薄く削って螺鈿(らでん)細工にしていたところから付けられたといいます。

琉球の漆工芸には七色に輝くこの螺鈿をはじめ、金箔を使った沈金(ちんきん)、立体感のある堆錦(ついきん)など、さまざまな技法がありました。なにより、高温多湿の気候が漆器の製作に向いていました。

『木漆工とけし』が手がける琉球漆器は、伝統にモダンが共存する。

『木漆工とけし』が手がける琉球漆器は、伝統にモダンが共存する。

こうした長い歴史を持つ琉球漆器ですが、『木漆工とけし』が手掛ける漆器は、従来のものとは少し違います。

「素直な形の木の器を作って、長く使えるよう丈夫にするために漆を塗っているのです」こう声を揃えるのは、ご夫妻でこの工房を営んでいる、渡慶次弘幸さんと愛さんです。

弘幸さんは木を削って器の形を作る木地師、愛さんはその木地に漆を塗る塗師です。ふたりとも沖縄県浦添市出身で、沖縄県工芸指導所を卒業後、輪島塗の産地、石川県輪島市で修業をしました。修業の年季が明けたあとも輪島で働き、2010年に沖縄で独立を果たしました。

楠を削る渡慶次弘幸さん。

楠を削る渡慶次弘幸さん。

工房を構えたのは本島北部の名護市。木地に使うのは、やんばるの木です。

「沖縄の木は扱いやすいとはいえませんが、それぞれの特徴を見て器を作る面白さがあります。作るものによって木の種類は違って、椀ものは楠(くす)、箱物にはセンダンの木が向いていますね」(弘幸さん)

楠は防虫剤の樟脳(しょうのう)の原料になるので、工房の中に爽やかな匂いが漂っています。

『塗り込み拭き漆』の技法を使った椀もの。

楠を使った椀もの。

一方、愛さんは2年ほど前から新しい塗りに取り組んでいます。

「漆で木を厚く覆ってしまうのではなく、漆を塗っては拭き取る『拭き漆』という伝統技法がありますが、私は木の素材感は見えつつも、拭き漆よりもう少し漆を塗り込んで仕上げるという塗りに行き着きました」(愛さん)

やんばるの木で作った木地を、漆がやさしく包み込む。軽くて手になじみ、長く使える器です。使うほどに愛着が増していきます。

小さな作品はこうした道具を使って、手で削る。道具も手作りだ。

小さな作品はこうした道具を使って、手で削る。道具も手作りだ。

那覇には『木漆工とけし』の作品を扱う工芸品のセレクトショップ『GARB DOMINGO(ガープ ドミンゴ)』があります。観光の合間に、ぜひ立ち寄ってみてください。

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【GARB DOMINGO(ガーブ ドミンゴ)】
住所/沖縄県那覇市壺屋1−6−3
電話/098-988-0244
営業時間/9時30分〜13時、15〜19時
定休日/水曜・木曜
http://www.garbdomingo.com

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伝統を守りながらも挑戦を続ける沖縄工芸の分野は、ほかにもあります。新しい作家たちも台頭しています。さらに、伝統工芸の新しい担い手を応援するセレクトショップも増えています。

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【ゆいまーる沖縄 本店<Storage&Lab.>】(南風原町)
■住所/沖縄県島尻郡南風原町宮平652
■電話/098-882-6995
■営業時間/11:00~20:00
■定休日/木曜
■駐車場あり
http://www.utaki.co.jp/storageandlab/

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【Yuna】(与那原町)
■住所/沖縄県島尻郡与那原町字与那原548
■電話/098-988-8792
■営業時間/11時~18時30分
■定休日/水曜
http://www.yuna-kuru.com/

これから沖縄は「うりずん」の季節を迎えます。デイゴの花もつぼみを膨らませ、季節は春から初夏の様相を見せます。沖縄の自然と向き合うことで生まれる、すばらしい工芸の数々。そんな魅力的な作品に触れたり、作り手に会ったりすることで、あなたも“本来の自分”を呼び覚ますことができるかもしれません。

さあ、本来の自分を取り戻せる島――沖縄の工芸を巡る旅へ、あなたも出かけてみませんか。

文/鳥居美砂
ライター・消費生活アドバイザー。『サライ』記者として25年以上、取材にあたる。12年余りにわたって東京〜沖縄を往来する暮らしを続け、2015年末本拠地を沖縄・那覇に移す。沖縄に関する著書に『沖縄時間 美ら島暮らしは、でーじ上等』(PHP研究所)がある。

写真/島袋浩

※本来の自分を取り戻せる島、沖縄の魅力がつまったWebサイト『Be.Okinawa』をぜひご覧ください。
↓↓↓
http://be-okinawa.jp/