紅葉映える芭蕉ゆかりの名駅!山寺駅(JR仙山線)【訪ねて行きたい鉄道駅舎 第11回】

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文・写真/杉﨑行恭(フォトライター)

11月のよく晴れた朝、山寺駅を訪ねた。この駅は山形と仙台を結ぶJR仙山線の渓谷にあり、山形平野から連続25パーミルの勾配を登ってきたところにある。

列車からおりると、黄色に真紅が混ざる紅葉真っ盛りの宝珠山・立石寺が、どかんと真正面に見える。あの芭蕉の名句「閑さや 岩にしみ入 蝉の声」で知られる、みちのくの古刹だ

立石寺と山寺駅とは、谷を挟んで向かい合っており、山寺駅のホームは、立石寺を愛でる最良の展望台になっている。

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駅舎はホームから下ったところにあり、地下道で連絡する。木造平屋の駅舎は、このまま参拝したくなるような寺院風の姿でたたずんでいた。

屋根こそ金属板で覆われているが、玄関の正面破風と左右の切妻に鬼瓦が置かれて堂々たる構えを見せている。

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山寺駅はみちのくの名駅舎と言っていいだろう。竣工した昭和8年当時は全国の有名神社仏閣のもより駅に、参拝客を見込んで和風駅舎が建てられた頃。この駅も「立石寺駅」ではなく地元の通称名「山寺駅」として誕生した。

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30年ほど前、初めてこの駅をたずねた時は、玄関に大きな柱時計が取りつけられ、風雪を経た駅舎はまさに芭蕉の句を思わせるような古寺のたたずまいだった。

その頃はすでに委託駅になっていて、毎朝職員がその柱時計のネジを巻いていたことを覚えている。

久しぶりに訪ねた山寺駅はすっかりリニューアルされ、待合室には囲炉裏も置かれていた。また駅舎に隣接して展望台も建てられていた。快適になった分、かつての枯れたたたずまいが消えたのがちょっと残念だ。

1985年の山寺駅。

1985年の山寺駅。

山間にあって窮屈な敷地だが、ホームの左右に3本の側線があり、その末端には転車台も残されている。これは非電化時代のなごりで、かつてはここで折り返す蒸気機関車のための設備だった。

ちなみにこの仙山線は、峠越え路線のため昭和30年代に日本初の交流電化区間となり(勾配に強い強力な電車が使えるため)、交直両用電車が投入された区間だった。

しかし山寺駅から山形よりは直流区間で、昭和43年までこの駅は交直切り替えのセクションでもあった。

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柿の実がたわわに実る小道を歩いて、駅から少し上流にある鉄橋で列車を待った。今も仙山線は全線が単線でこれより仙台方面の山寺駅〜面白山高原駅間は急峻な山岳路線になる。

しばらくして、下ってきた山形行の電車が鉄橋を渡っていった。その背景に立石寺奥の院が見事な紅葉の中に見えた。山寺は名駅舎とともに、鉄道絶景の地だと思った。

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【山寺駅 (JR東日本仙山線)】
ホーム1面2線で、日中有人の委託駅
所在地:山形県山形市大字山寺4273
駅開業年月日:1933年(昭和8)10月17日
アクセス:仙台から仙山線で約1時間

文/杉﨑行恭
乗り物ジャンルのフォトライターとして時刻表や旅行雑誌を中心に活動。『百駅停車』(新潮社)『絶滅危惧駅舎』(二見書房)『異形のステーション』(交通新聞社)など駅関連の著作多数。