アメリカ生まれの保護猫・小太郎とフライドポテト

空前の猫ブームといわれる昨今。でも、猫の生活や行動パターンについては、意外と知られていないことが多いようです。人間や犬の行動に当てはめて考えて、まったく違う解釈をしてしまっていることも少なくありません。昔から猫を飼っているから猫の性格や習性を熟知していると思っていても、じつは勘違いしていたということが結構あるようです。

そこで、動物行動学の専門医・入交眞巳先生(日本獣医師生命科学大学)にお話を伺いながら、猫との暮らしで目の当たりにする行動や習性について、専門的な研究に基づいた猫の真相を解明していきたいと思います。

 

元気だった頃の、入交先生の愛猫・小太郎くん。

元気だった頃の、入交先生の愛猫・小太郎くん。

 

前回は、猫にも“おふくろの味”があるということと、好き嫌いについてお話ししました(記事を読む)。 猫の食べ物の話というと、私にも以前飼っていた愛猫との間に、ちょっと切ない思い出があります。

私がアメリカに住んでいた頃に飼い始めたキジトラの小太郎は、もともと野良猫でした。生後1歳~2歳くらいの時に、交通事故に遭って大けがをしているところを、私の友人が保護。病院で治療を受けてからしばらくの間、友人の実家でお世話をしていましたが、長くは飼えないということで、私が引き取ることになりました。うちに来た時の小太郎は、傷こそ癒えていましたが、右耳が少し潰れて、左手の先も少しなくなっていました。でも、まだ子猫のあどけなさを残すやんちゃな猫で、元気いっぱい。瀕死のところを助けられて一命をとりとめ、生を満喫しているようでした。私が帰国する際、小太郎も日本に連れ帰ってきました。

小さい頃はアメリカの街でお母さんからハンティングを教わった小太郎くん。最後まで“おふくろの味”は忘れられなかったようです。

小さい頃はアメリカの街でお母さんからハンティングを教わった小太郎くん。最後まで“おふくろの味”は忘れられなかったようです。

■小太郎の好物は鶏肉

小太郎の好物は、鶏肉でした。といっても、私がそれに気づいたのは、ずいぶん後になってからのこと。もともと野良猫なので基本的になんでも食べた小太郎でしたが、晩年に病気を患ってから、小太郎がどれだけ鶏肉好きだったかを改めて知ることになったできごとがあったのです。

病気になった小太郎は、次第に食欲が落ちていきました。小太郎が今まで好きったペットフードはもちろん、猫用のおやつや、いつもより高価なフードをあげたりしましたが、食はほとんど進みませんでした。以前はあんなに食いしん坊だったのに。何か食べてくれないと体力がどんどん落ちてしまうのではと、心配の日々でした。

ある日の晩、私の母が鶏肉の酒蒸しを作っていました。夕食の一品だったのですが、なんとなく思いついて、鶏肉の酒蒸しをひと切れ、小太郎に与えてみました。すると、食欲がなくなっていた小太郎が、大喜びで食べ始めたのです。それ以来、私は毎日、小太郎のために鶏肉の酒蒸しを作ることになりました。私も獣医です。小太郎の命はもう長くはないとわかっていましたから、少しでもいいから好きなものを食べて、少しでも元気を取り戻して欲しかったのです。

しばらくの間は鶏肉の酒蒸しでなんとかしのいでいたのですが、そのうち、それさえもあまり食べてくれなくなってきました。日に日に体力は衰え、つらそうに寝てばかりいた小太郎でした。

すやすや眠る小太郎くん。お母さんの夢を見ていたのでしょうか。耳や鼻の頭、手の先には、野良猫時代に遭遇した交通事故の傷跡がありました。

すやすや眠る小太郎くん。お母さんの夢を見ていたのでしょうか。耳や鼻の頭、手の先には、野良猫時代に遭遇した交通事故の傷跡がありました。

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