猫にも認知症がある!高齢猫の行動が心配なとき飼い主がやるべきこと【猫のふしぎ第20回】

空前の猫ブームといわれる昨今。でも、猫の生活や行動パターンについては、意外と知られていないことが多いようです。

人間や犬の行動に当てはめて考えて、まったく違う解釈をしてしまっていることも少なくありません。昔から猫を飼っているから猫の性格や習性を熟知していると思っていても、じつは勘違いしていたということが結構あるようです。

そこで、動物行動学の専門医・入交眞巳先生(日本獣医師生命科学大学)にお話を伺いながら、猫との暮らしで目の当たりにする行動や習性について、専門的な研究に基づいた猫の真相に迫っていきます。

12歳のシャムの雄猫、レオン。最近は寝ている時間が増えたけど、まだまだおもちゃ遊びは大好きで、時には華麗なジャンプを見せてくれます。猫の方舟レスキュー隊で里親募集中。

12歳のシャムの雄猫、レオン。最近は寝ている時間が増えたけど、まだまだおもちゃ遊びは大好きで、時には華麗なジャンプを見せてくれます。猫の方舟レスキュー隊で里親募集中。

■11歳~14歳の猫の約1/4に認知機能の低下の傾向がある

今年1月に日本ペットフード協会が発表した日本に住む猫の最新の平均寿命は、15.75歳です。また、家の外に自由に出入りしている猫の平均寿命が14.22歳であるのに対し、完全室内飼いの猫の平均寿命は16.40歳。外に出ればそれだけ事故に遭ったり、ケガをしたり、病気に感染する可能性が高まってしまいます。

完全室内飼いなど猫の飼い方に関する意識も徐々に高くなってきているおかげで、猫の平均寿命は年々延びています。そこで気になるのが、飼い猫の高齢化です。人と同じで、猫も年をとるにつれ、体力が低下したり、体調も崩しやすくなってきたりします。

身体能力の衰えばかりではありません。実は、猫にも認知症というべき症状があることがわかっています。

年を取ってくると、若いころよりも元気がなくなる、寝てばかりいる、食欲が落ちた、高いところに登れなくなる、頻繁に吐く、うんちが緩い、ふらついている、徘徊するなどといったことが増えてきます。人もそうですが、歳をとると忘れっぽくなって、さっき食べたばかりなのに何度もご飯を催促するといったこともあるようです。

猫の場合、11歳~14歳(人間でいうと60歳~72歳くらい)の猫の28%、15歳(人間んでいうと76歳くらい)の猫の50%に認知機能の低下が見られるといわれています。(※)

私が以前飼っていた小太郎も、迷い込んだネコだったので正確な年齢はわかりませんが、およそ13歳で亡くなりました。リンパ腫だったのですが、有名なエッティンジャーという内科の教科書でリンパ腫を発病する平均年齢は13歳なので、どうも小太郎は分厚い教科書を読んで実践してしまったようです。

病気の愛猫を目の当たりにするのは辛いものです。病気にならないようフードに気を付けたり、適度な運動、精神的に豊かな暮らしをさせるよう心掛けるといいですね。愛猫の様子を注意深く見ていて、変化にいち早く気づいて対応できるようにしておくのもいいでしょう。

食いしん坊なのに、歯肉炎でご飯が食べづらい健太郎12歳。

食いしん坊なのに、歯肉炎でご飯が食べづらい健太郎12歳。

■自己判断は禁物!病気の可能性も

長く一緒に暮らしていると、高齢になった愛猫が、急に夜鳴きをするようになったとか、今までちゃんとできていたトイレが上手にできなくなったとかいった変化に気づく日がくるでしょう。そんな時に大切なのは、「もうこの子もおばあちゃんだからねぇ」とか「おじいちゃんだから仕方ないね」などと、自己判断してしまわないこと。

例えば、夜鳴き。高齢になると夜鳴きをするようになる猫もいますが、その理由が単に高齢のため認知症になったことで、それまでしていなかった夜鳴きをするようになったのか、何らかの病気など別の要因で夜鳴きをしているのか、動物病院できちんと検査をして、原因を確かめた方がいいと思います。

夜鳴きには、それぞれの猫にそれぞれの理由があると思います(寂しい、お腹がすいたなど)。高齢猫の場合、ご飯を食べたのに忘れてしまって催促で夜鳴きするとか、自分がどこにいるか分からなくなって不安で夜鳴きしている場合は、認知症の可能性もあります。

もちろん高齢猫で目が見えにくくなったり、耳が聞こえにくくなったりして不安で夜鳴きをするとか、飼い主さんの気をひくためとかいう可能性もありますが、やっかいなのは、甲状腺機能亢進症という病気の疑いも考えられることです。

甲状腺ホルモンが過剰になると、走り回ったり、落ち着きがなくなったりして、攻撃的になったり、痩せてきたりすることもあります。ですから、夜鳴きも甲状腺機能亢進症の症状かもしれないのです。

嘔吐にしても、猫はよく毛玉を吐きますし、年を重ねるごとに抜け毛も増えて毛を吐く量も増えるかもしれません。でも、それ以外にも腎臓病だったり、癌の可能性もありますから、やはり検査をした方がいいでしょう。

うんちが緩いと一口にいっても、血便かどうか、下痢気味かどうか、逆に便秘かどうかによって、単に高齢になったからということ以外に様々な病気の可能性が秘められています。

よたよたしているな、と思っても、高齢で足腰が弱くなったためではなく、実は神経や関節に問題がある可能性だってあります。口内炎や歯周病では口をくちゃくちゃしたり涎をたらすこともありますから、「年だから口の絞まりが悪いのね」と自己判断せず、やはり検査をすべきです。

高齢猫に多い腎不全を患っている雌猫のさつき。食欲は一際旺盛で、腎臓サポートのウェットフードもしっかり食べますが、食べたことを忘れてしまうのか、すぐにまたご飯の催促をします。

高齢猫に多い腎不全を患っている雌猫のさつき。食欲は一際旺盛で、腎臓サポートのウェットフードもしっかり食べますが、食べたことを忘れてしまうのか、すぐにまたご飯の催促をします。

■愛猫の認知症に向き合う

動物病院での検査の結果、健康面に問題がなく、高齢に伴う軽い認知症や認知機能の低下との診断が出れば、少しでも症状が進むのを防ぐために、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化成分や、DHA、EPA配合のシニア猫用フードで補っていくのもひとつの方法です。認知症の猫のためのサプリメントもあります。

人が、人間ドッグなどで定期検診するように、猫も年をとってきたら、半年から1年に一度くらいはきちんと検診をすることが望ましいです。血液検査、触診、歩き方など、いろいろな機能を見てもらい、健康チェックをすることで、より長く健康でいられることになるのです。

とにかく、自己判断しないこと。行動が今までと違う、と思ったら、まずは動物病院で診察してもらって下さい。様々な病気の可能性をチェックして、全てクリアした後で初めて、単なる高齢による行動の変化というホッとできる結論が出るのだと思って下さい。

大切な家族を守るには、それくらいの覚悟が大事なのです。

※参考文献:Landsberg, G.M., Denenberg, S., Araujo, J.A., 2010. Cognitive Dysfunction in Cats: A Syndrome we Used to Dismiss as ‘Old Age’. Journal of Feline Medicine and Surgery 12: 837

入交眞巳さん

指導/入交眞巳(いりまじり・まみ)
日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業後、米国に学び、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。日本ではただひとり、アメリカ獣医行動学専門医の資格を持つ。北里大学獣医学部講師を経て、現在は日本獣医生命科学大学獣医学部で講師を勤める傍ら、同動物医療センターの行動診療科で診察をしている。

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累計21万部を突破した「わさびちゃんシリーズ」の 第1弾『ありがとう! わさびちゃん』(小学館刊)。

■わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。

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