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現在、デジタルカメラの市場には各メーカーから多種多様な機種が登場しているが、それらの多くは機能性などの点から、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼、コンパクトデジタルカメラ(通称、コンデジ)のいずれかに分類できるだろう。

カメラの世界に”序列”のようなものがあるとしたら、上から、一眼レフ、ミラーレス一眼、コンデジ、という順になりそうだが、実際には、それぞれに長所短所、得意不得意がある。

交換レンズやアクセサリーが充実して何でも撮れるというのが一眼レフならではの優れたシステム性であり、プロのカメラマンが一眼レフを使う大きな理由のひとつでもある。

ミラーレスは一眼レフのシステム性を残したまま、カメラボディと交換レンズを小型軽量化することに邁進している。

それでは、コンデジはどうかというと、ボディとレンズが一体化しているので撮影シーンや被写体などに応じてレンズを交換することはできないが、それを補うように1台で何でも撮れるよう多彩な機能を備えた万能型から、ある特殊な用途に特化した専用型まで、じつに幅広いジャンルを多種多様な機種でカバーしているのだ。

そんなコンデジならではの機能の中で、一眼レフが太刀打ちできないのが「超望遠」である。

一眼レフは高画質を追求するため、フィルムに相当するセンサーの面積を広くしている。たとえば、35mmフィルムと同じフルサイズのセンサーであれば、望遠レンズもその面積をカバーする必要があり、焦点距離1000mmであれば、レンズの長さは1mとなってしまう。これでは手持ち撮影は困難である。

ニコンの交換レンズでいえば、以前は1200mm、反射望遠の2000mmがあったが、現在は800mmF5.6までで、長さ46.1cm、重さ4.5kg。価格は214万円(税別)と大変高価なレンズだ。キヤノンも同じく800mmF5.6があり、長さ46.1cm、重さ4.5kg、価格175万円(税別)である。

コンパクトデジタルカメラはセンサーの面積が小さいため、一眼レフと同じ焦点距離のレンズを使っても必然的に望遠効果が得られる。それによって一眼レフでは不可能だった1000mm、2000mmというズームレンズを搭載できるのだ。さらにデジタルズームを使えば、画質をあまり落とさずに4000mmが使えるようになる。

カメラのカタログにはよく、65倍ズームとか83倍ズームなどと書かれているが、あれはそのズームレンズ広角端から望遠端までのズーム比なので、双眼鏡の何倍というのは多少のずれがある。50mmを1として計算すると、1000mmは20倍、2000mmは40倍の大きさに見えることになる。

■五円玉の穴の大きさの月はどれぐらい大きくなるのか

超望遠ズームはもともと、運動会や文化祭で我が子の姿をアップで撮りたい、野鳥・飛行機・列車などをアップで撮りたいという要望から生まれた。年々、高倍率化が進み、現在ではいささかオーバークオリティともいえるほどの倍率に到達し、実際に何を撮っていいのかわからないほどの望遠効果が得られる。

そこで、超望遠ズームを備えるコンパクトデジタルカメラで、地球にもっとも近い天体である月を撮ってみた。月は地球から約38万kmの距離にある衛星で、肉眼で見ると五円玉の穴の大きさ、すなわち約0.5cmの大きさであるという。試しにスマホや一眼レフで月を撮ってみると、イメージよりも小さいことが実感できるだろう。テレビドラマなどで月がドーンと出てくるシーンがあるが、あれはかなりの超望遠レンズで撮影しているかCGを使っている。

今回、使ったコンパクトデジタルカメラは、24~2000mm相当の超望遠ズームレンズを搭載するニコン『COOLPIX P900』。下の写真の右側にあるレンズは、ニコンの35mm一眼レフ用交換レンズで反射望遠500mmF8。『COOLPIX P900』は、この500mmレンズの4倍の焦点距離をコンパクトなボディに収めている。

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手前左は24~2000mm相当の超望遠ズームレンズを搭載するニコン『COOLPIX P900』。右奥はニコンの35mm一眼レフ用の反射望遠500mm F8の交換レンズ。

まずは、夕方の明るい時間、青空に白く浮かぶ月を三脚を使わず手持ちで撮影してみた(【作例①】)。手ブレ補正機能によって、クレーターまでブレずにしっかり写っている。

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【作例①】撮影データ/焦点距離2400mm相当 F6.5 1/250秒 ISO110 デジタルズーム120%。

デジタルズームを使ってさらに拡大していくと、月の表面の細かな模様やクレーターも見えてきた。

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【作例②】撮影データ/焦点距離3600mm相当 F6.5 1/250秒 ISO110 デジタルズーム180%。

【作例③】の写真は、一眼レフと望遠ズームレンズの組み合わせで撮った月。375mm相当で、ホワイトバランスをオートにするとモノクロのような色になった。

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【作例③】撮影データ/焦点距離375mm相当 F5.6 1/125秒 ISO800。

完全に露出オーバーで白く飛んでしまったが、下の【作例④】がAPS-Cサイズ用の300mmで撮った月の最大の大きさだ。こちらは三脚を使用して撮影。

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【作例④】撮影データ/焦点距離450mm相当 F6.7 1/45秒 ISO1600。

■シャープで美しい月の写真が撮れる

そして下の【作例⑤】が、ニコン『COOLPIX P900』の2000mmで撮った夜の月。絞り開放だが非常にシャープで、特にAFが正確なのが素晴らしい。月の色も肉眼で見る色に近い。

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【作例⑤】撮影データ/焦点距離2000mm相当 F6.5 1/250秒 ISO400。

さらにデジタルズームで4000mm相当にして撮影(【作例⑥】)。手ブレ補正機能のおかげで、ここまでズームしても、まだ手持ちで大丈夫だ。手ブレ補正機能に関してはニコンが一番効果的に感じられた。

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【作例⑥】撮影データ/焦点距離4000mm相当 F6.5 1/250秒 ISO560 デジタルズーム200%。

センサーが小さく、レンズ交換もできないことから一眼レフやミラーレス一眼よりも格下に位置づけられることの多いコンパクトデジタルカメラ。しかし、今回紹介した超望遠ズームを備えるニコン『COOLPIX P900』など、コンデジであっても機能性において一眼レフを凌駕する機種もある。そんな”一芸に秀でた”コンデジならではの実力をぜひ体験していただきたい。

ニコン『COOLPIX P900』(実勢価格/約7万2900円)
【製品概要】
センサー:1/2.3インチCMOS
有効画素数:1676万画素
焦点距離:24~2000mm(35mm換算)
F値:F2.8~6.5
ISO感度:100~6400(Hi1/12800)
サイズ:幅139.5×高さ103.2×奥行き137.4mm
重量:約899g
製品URLはこちら

取材・文/ゴン川野
小学1年からOLYMPUS『PEN』を操り、中学生で押し入れ暗室にこもり、高校写真部では部長を務めカラーの現像・プリントを実践。デジカメ創生期よりDIMEカメラ担当ライターを続ける。オーディオ生活は40余年。Macとあらゆる電化製品にもこだわりを持つ。

 

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