地元でも愛される北の珍味!北海道・帯広『牧野水産』の「いかの塩辛」ほか【辰巳芳子さんの私のおすすめ】

談/辰巳芳子(料理家)

漁師は、自然の恵みをいただく仕事です。好漁も不漁もあるでしょう。最近は温暖化の影響でいかの漁獲量も減少して、美味しい塩辛には欠かせないワタの大きいいかも少なくなっているそうです。

そんな中、北海道・帯広の『牧野水産』は魚屋の目利きを生かして原料を選び、少人数で少量ずつ生産しています。地元でも愛されているこちらの塩辛は、あまり塩辛くなく、とても良い味です。

塩辛にあさつきを添えるのは、風邪をひかないようにという日本人の知恵です。富山大学の生薬研究所の臨床によれば、ねぎ類に含まれる成分には、人の免疫力を上げる効果があるそうです。

あさつきは、ねぎのように水にさらす必要がなくて手間いらず。パリッとしたあさつきにオリーブオイルをかけて、良いお塩と良いワインビネガーで和えれば、いい付け合わせになります。

『牧野水産』では、「いかの塩辛」だけでなく「鮭のめふん」や「ほやの塩辛」といった珍味も製造・販売しています。

「鮭のめふん」は、オスの鮭の中骨に沿ってついている血腸(腎臓)の塩辛で、浜の漁師さんに依頼して作ってもらい、そのまま瓶詰めにしているそうです。

このめふんは、メルバトースト(カリカリに焼いてごく薄く切ったトースト)などにちょっとつまんで載せて食べるといいです。鮭のめふんを載せたメルバトーストには、ウイスキーのような洋酒がよく合います。このように、従来からある食材を新たなものとして食するには、伝統的な文化に他国の文化をちょっと取り入れるといい。それによって、新しい道筋が見つかります。

「ほやの塩辛」は、流氷が運んでくる豊富なプランクトンと知床の森のミネラル豊かな海で育った丸々とした蝦夷ほやを原料に「牧野水産」では1年を通してほやの塩辛を作っているそうです。

昨年は、北海道には嵐がたびたび来て、漁師さんは船が出せず、鮭の漁獲高も多くなかったそうです。こういう地元の保存食を都会の人が購入することは、漁師さんや地域を支える助けになるでしょう。

今回ご紹介した「いかの塩辛」や「ほやの塩辛」など、海の男が自分たちのために作って元気を養うものは、都会の男の元気も養ってくれると思います。

「いかの塩辛」(左)は創業60余年の「牧野水産」の名物商品。函館で水揚げされたいかの中でもワタが大きく熟成したいかを厳選して「いかの塩辛」を作っていて、地元の人にも人気が高い。1瓶140gで500円。「鮭のめふん」(右)は浜の漁師が水産工場で作っているめふんの保存食を瓶詰めにして販売。料理旅館や地元の居酒屋で愛されている珍味。1瓶140gで880円。丸々とした蝦夷ほやを原料にした「ほや塩辛」は1瓶140gで1100円。(すべて税込み・送料別)

【商品についての問い合わせ先】
電話:0155-22-4810(牧野水産)
*日々の製造に限りのあるため注文は電話でのみ受付。
注文受付:電話 0155-23-6078(牧野水産)
営業時間:9時~17時(日・祝は休み)

辰巳芳子(たつみ・よしこ)
料理家。1924年生まれ。聖心女子学院卒業。家庭料理、家事差配の名手として今も語り継がれる母、辰巳浜子の傍らにあって料理とその姿勢を我がものとし、独自にフランス、イタリア、スペイン料理も学び、広い視野と深い洞察に基づいて、新聞、雑誌、テレビなどで日本 の食に提言しつづけている。 近年は、安全で良質の食材を次の世代に用意せねばとの思いから「大豆100粒運動」会長、「良 い食材を伝える会」会長、「確かな味を造る会」の最高顧問を務める。

撮影/小林庸浩、構成/尾崎靖(小学館)