「人」は、古今東西の画家たちを魅了してやまないモチーフです。

近代の日本画においても、女性の端正な姿やその心情を見事に表現した美人画や、歴史や文学に登場する人物を理想的な姿で描いた作品など、さまざまな人物表現を見ることができます。

安田靫彦《王昭君》〔昭和22年(1947)紙本彩色・額装 足立美術館蔵〕

安田靫彦《王昭君》〔昭和22年(1947)紙本彩色・額装 足立美術館蔵〕

近代の日本画家たちは、押し寄せてくる西洋画の影響を受けつつ、日本の伝統や歴史に関する考えを深めていき、新しい時代に合った表現を模索しました。

彼らにとって「人」というモチーフは、人間の内面を表現するだけでなく、時代の思想や時代が理想とする人物像を描くための格好の題材でした。それらは単なる人物画ではなく、画家たちの理想を体現したものといえるでしょう。

そんな近代日本画の画家たちが追い求めた“人間の理想像”をうかがい知ることができる展覧会「HUMAN-ヒューマン- 日本画にみる理想の人物表現」が、島根県の足立美術館で開催されています。

横山大観《無我》〔明治30年(1897)絹本墨画淡彩・額装 足立美術館蔵〕

横山大観《無我》〔明治30年(1897)絹本墨画淡彩・額装 足立美術館蔵〕

本展では、所蔵する近代日本画のなかから、人物画や仏画の名作を厳選して紹介し、近代日本画のさまざまな人物表現を分かりやすく解説します。

本展の見どころを足立美術館の学芸員、山根布由美さんにうかがいました。

「本展では、近代日本画の大家21名の人物画を一堂に展示します。近代の日本画家は、それぞれ独自の人物表現を追求しました。それらの作品には、画家たちの“理想”が示されています。

横山大観の出世作とされる《無我》は、仏教の理想の境地を示す概念を無垢な童子の姿で象徴したものです。上村松園《娘深雪》は、最も好きな日本婦人のひとりとして浄瑠璃『生写朝顔話』の深雪を挙げ、内気で淑やかな娘らしい内面までも表現しています。

ほかにも、現実には見られぬ美しい世界を歴史画で追及した安田靫彦の代表作《王昭君》、その靫彦が絶賛した小林古径の《楊貴妃》など、人物画が近代を通して日本画の主要なモチーフであったことを示す作品が並びます。

また、本展では仏画を究極の人物表現ととらえ、入江波光の《如意輪》や村上華岳の《観世音菩薩 巌上拈花之図》も展示します」

名にし負う庭園とあわせて、近代日本画の巨匠たちが描いたさまざまな人物表現を見に、ぜひ足をお運びください。

【春季特別展 「HUMAN-ヒューマン- 日本画にみる理想の人物表現」】
■会期:2017年3月1日(水)~5月31日(水)
■会場:足立美術館 本館・大展示室
■住所:島根県安来市古川町320
■電話番号:0854・28・7111
■ウェブサイト:http://www.adachi-museum.or.jp/
■開館時間:9時~17時、4月1日からは17時30分まで
■休館日:年中無休(新館のみ4月18日休館)
■入館料:大人2300円 大学生1800円 高校生1000円 中・小学生500円 ※本料金で日本庭園や陶芸館、新館などすべて観覧可、各種割引制度あり
■アクセス:JR安来駅より無料シャトルバスあり

取材・文/池田充枝

 

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