「人生は一局の棋なり 指し直す能わず」(菊池寛)【漱石と明治人のことば12】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】

「人生は一局の棋なり 指し直す能(あた)わず」--菊池寛

文藝春秋社の創始者にして、小説『真珠夫人』や戯曲『父帰る』などの作者として知られる菊池寛は、無類の将棋好きだった。一日数回、盤の前に座り、対する相手のないときはひとり古今の名局の棋譜をたどった。人生を真剣勝負の将棋にたとえ、「指し直し」はきかないと言い切るのは、いかにも菊池寛らしい。

菊池寛は、芥川龍之介や久米正雄、松岡譲らと一高で同級生だった。ところが、友人の盗難事件の罪をかぶって西下するという事件があったため、東京帝国大学に進んで漱石の薫陶を受けるに至る他の面々とは異なる道を進んだ。
ヘボ将棋なのだから、たまに「待った」は許されていい、などと思うのは凡夫の甘えだろうか。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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