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『サライ』2007年1月4日号の追悼記事より(撮影/高橋曻)。白川さんは逝去の直前、本誌に次の言葉を寄せてくれた。「年老いては、生活は簡素であることを欲する。規則的であることを欲する。また美しく、素直であることを欲する。そして、そのような生活に相応しい読み物を欲する。『サライ』はその理想に近い雑誌である」(2006年10月19日号)

中国文学者の白川静(しらかわしずか・1910‐2006)は、中国の殷(いん)・周の甲骨文(こうこつぶん)や金文(きんぶん)の研究を通して漢字の成り立ちにおける宗教的・呪術的背景を字形の分析から明らかにし、94歳で文化勲章を受章した。

福井市の商家に生まれた白川は、小学校卒業後に大阪の代議士の家に住み込み、手紙の整理などを手伝っているうちに漢字の魅力にとりつかれ、学者の道に進むことを決意したという。

立命館大学卒業後、同大学で教鞭をとった白川だが、その地道な研究がようやく世に出たのは還暦の頃であった。73歳から『字統(じとう)』『字訓(じくん)』『字通(じつう)』の3部の辞書の編纂(へんさん)に着手し、86歳で完成させた。

そんな白川は、長く仕事を続ける秘訣をたずねられると、「なるべく具体的に、手の届く範囲で目標を立て、規則正しく生活すること」と述べた。その言葉どおり、白川は夜9時に就寝して朝7時に起床し、午前中の頭がさえているときに集中して仕事をし、午後は散歩や趣味の謡曲を楽しんだ。

アイススケートの荒川静のファンで、散歩中にイナバウアーの真似をしたという白川。96歳で体調を崩して入院した際も、病室にも机を持ち込んで研究を続けた。

最後の言葉は「ようけ書いたなあ」だったという。

文/内田和浩

※本記事は「まいにちサライ」2013年10月18日掲載分を転載したものです。

 

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